不動産業務効率化のポイントとは。不動産業界がアナログな理由とは

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不動産業務効率化のポイントとは。不動産業界がアナログな理由とは

不動産業界はアナログなやりとりが多いといわれています。

不動産業界は本当にアナログなのか、そう言われる理由と不動産業務を効率化するポイントについて解説します。

不動産業界はアナログ、は本当?

不動産業界はよくアナログだと言われますが、実態を検証し、どのような業務がアナログなのかを解説します。

産業別ICT活用状況

以下のグラフは平成26年時点での産業別のICT活用状況を総務省が公表したものです。

 

ICTスコア

総務省|平成26年版 情報通信白書|我が国産業界におけるICT投資・利活用の現状 より

 

情報通信業が9.5であるのは当然だとして、製造業9.5、金融保険業が7.6のスコアであることと比べて不動産業は5.6と大きく見劣りするスコアになっています。

 

ICTとはInformation & Communications Technologyの略語であり、情報通信技術のことを言います。

アナログな業務は?

不動産業界では、以下のような業務方法が主流になっているためアナログからデジタルへ切り替えることが難しい状況です。

 

  1. 連絡方法は電話やFAX

  2. 紙の書類のやりとりが多い

  3. 現地内覧

  4. 契約や重要事項説明は対面が多い

 

1.連絡方法は電話やFAX

不動産業者間での連絡やお客様との連絡は電話やFAXが主に利用されています。

 

2.紙の書類のやりとりが多い

不動産売買契約書や賃貸契約書などの契約書類や、契約書類に添付する法務局の公図、測量図などの図面、マンションの管理規約など多くの書類が紙の書類で作成されます。

 

3.現地内覧

賃貸契約や売買契約をする前に賃貸希望者や購入希望者は、ほとんどの場合直接現地に出かけて確認することを希望します。

 

4.契約や重要事項説明

賃貸や売買をするときには契約前に重要なことがらを説明する重要事項説明を宅地建物取引士が行ないます。

 

その後契約を締結しますが、これらの重要事項説明や契約は紙の資料を提供したうえで直接面談しながら行なうことが多い業務です。

どうしてデジタル化できない?

アナログからデジタルへの切り替えが難しい理由は、アナログにも長所があるためです。

 

例えば、電話で直接話すことで相手の声の様子で温度感が伝わります。

声の調子で積極的か消極的かが判断できます。

 

また不動産の資料のほとんどが紙で作られている現状があるため、紙の資料をそのままFAXで送ればボタン1つで情報の共有が可能です。

 

紙の資料をスキャンしてメールに添付して送ることやインターネット上にあげる方法では、さらに作業が1つも2つも増えてしまいます。

 

さらに、不動産は高価な契約になりますから、お客様も慎重になります。

実際に自分の目で現地を見たいと希望する人が多くいます。

 

また、お客様から相手の顔が見える対面での重要事項説明や契約締結が望まれることが多いのが実際です。

 

しかし、不動産に関係する法律や規制は範囲が広く、複雑です。

お客様にわかりやすく規制を説明し、理解されているかを確認するためには顔を合わせて面接することにメリットがあります。

効率化が望まれる不動産業務とは

不動産業務を、ITテクノロジーを活用することによってどのように業務が効率化されるのかを解説します。

無人内見

賃貸契約や売買契約に先立って現地を確認したいと希望するお客様がほとんどです。

 

このような場合、不動産会社のスタッフが現地にお客様と一緒に同行することになります。

 

AR(拡張現実)やVR(仮想現実)技術を活用することで、お客様は自宅や不動産会社にいながら現地を確認することができるようになります。

 

また、物件に設置されたスマートロックやIoTカメラを駆使して、内見希望者が一人で物件を内見するシステムも、自由に気兼ねなく内見ができると好評です。

 

ショウタイム24が提供している「無人内見システム」を使えば、無人内見の環境を作り上げるだけでなく、高い成約率や内見スタッフが不要となるため、人件費の削減なども実現しています。

電子契約

契約書や重要事項説明を電子化することで業務の効率化が進みます。

電子化することには以下のようなメリットがあります。

  1. スピーディ

  2. コスト削減

  3. 事務負担を軽減

 

1.スピーディ

書面による契約だと面接する時間を調整し、お客様や不動産会社のスタッフは遠隔地の場合でもわざわざ移動する必要がありますが、オンラインで契約すれば時間や場所の制約がなくなりますから、スピーディに契約ができます。

 

2.コスト削減

不動産の契約は契約金額が高く重要な書類が多いため書留郵便や配達記録付で郵送します。

また電子化することで、紙の契約の場合に貼付が必要な収入印紙を貼付する必要がなくなります。

 

3.事務負担を軽減

書類を郵送するとなると郵送するために郵便局まで出かける必要がありますし、切手や封筒を準備したり宛名や送付状を準備したりしなければなりません。

電子化すればこのような手間を省くことが可能です。

顧客管理ツール

売買賃貸共通の顧客管理

売買や賃貸において顧客管理は重要ですがとても時間と手間がかかる業務になっています。

顧客管理をIT化することで省力化できるメリットが多くあります。

 

お客様からのファーストコンタクトから管理システムに登録することで、以下のような場面で情報を連結して活用できます。

 

1.ファーストコンタクト

お客様から問い合わせメールが届いたり自社サイトにお客様が登録したりした情報を、自社のシステムに手入力で登録するなら二度手間です。

このようなメールや登録情報を一元管理するシステムがあれば作業が効率化し入力ミスも防ぐことができます。

 

2.追客

ファーストコンタクトによる登録情報がシステム上にあれば、この登録情報から自社のインターネットサイトにアクセスしたお客様に対して自動的に案内メールやSNSを発信したり、お客様のWEB行動を分析してお客様が興味をもっている物件を紹介したりできます。

 

3.顧客対応

システムに登録してある情報は社内で共有されるので、担当者が不在でもお客様の情報がわかりますから、他の社員が対応できチャンスを逃しません。

 

賃貸特有の顧客管理

また顧客管理ツールは、賃貸物件の管理をする際のいろいろな場面で活躍します。

賃貸では空き物件の管理、月々の家賃の入金管理、未払賃料の督促、オーナーへの報告書作成などの顧客管理業務があります。

このようないろいろな業務をIT化することで連携させることができます。

例えば銀行の口座と会社のシステムを連動させることで入金管理から督促状の作成、オーナーへの報告書作成業務まで全て自動で行なってくれます。

不動産業務を進化させる不動産テックサービス

「不動産テック(Prop Tech、ReTech:Real Estate Techとも呼ぶ)とは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組み」(不動産テック協会)のことを言います。

 

この章では不動産テックがどのように不動産業務を進化させていくのかを解説します。

不動産テックカオスマップ

2021年の不動産テック業界では、非対面やリモート分野、管理業務支援分野の増加が目立ち、情報の共有分野に新しい動きがあります。

 

最近では、やはりコロナ禍の影響が大きく非対面やリモートでの対応が求められていること、働き方改革によって業務効率をあげることが求められていることがカオスマップに反映されています。

また今までは自社に情報を囲い込む状況が続き共有できていなかった「不動産情報」「価格可視化・査定」分野がそれぞれ1.6倍と1.3倍の伸びをみせていることは新しい動きです。

 

非対面やリモート分野では「VR・AR」が1.55倍、また「管理業務支援」は1.42倍と伸びている状況です。

 

不動産テック協会が2021年7月に公表した不動産テックカオスマップ第7版(446社)第6版(352社)などを不動産テック協会の下記サイトで閲覧できます。

不動産テックカオスマップ

不動産テック カオスマップ|不動産テック協会 – Real Estate Tech Association for Japan

カオスマップの分野の説明

簡単にカオスマップの分類カテゴリーとサービスを紹介します。

 

1.取引に関するカテゴリー

 

マッチング

不動産の所有者と買主や利用者、労働者と業務などをマッチングさせるサービス群です。

 

スペースシェアリング

オフィスや駐車場に限らず建物のデッドスペースなど不動産に関連するものを時間単位から中長期にわたって貸し出すシェアリングサービス、またそれらをマッチングさせるサービス群です。

 

クラウドファンディング

空き家活用などクラウドファンディングを活用する事業。

個人から不動産に投資や融資を行なうサービスや不動産事業を目的にした資金需要者と提供者のマッチングサービスなどがあります。

 

ローン・保証

不動産を取得する際や賃貸契約の初期費用のためのローン、個人の与信を自動的に算定してくれるサービスなど。また、任意売却に関わるサービスもあります。

 

2.評価に関するカテゴリー

 

物件情報・メディア

不動産の物件ポータルサイトや、不動産会社向けの情報発信メディアなど。

 

価格可視化・査定

AIやビッグデータを活用して不動産価格や賃料の査定ができるサービスです。

 

3.業務に関するカテゴリー

 

仲介業務支援

不動産の売買、賃貸の仲介業務の効率化や支援を行うサービス。

顧客の自動追客や賃貸仲介における物件確認、電子契約サービスなどを提供しています。

 

管理業務支援

不動産管理業務における業務効率や生産性の向上に貢献するサービスです。

賃貸管理や入居者・オーナーとのコミュニケーションツールなどを提供しています。

原状回復工事などの工事の進捗管理ができるサービスもあります。

 

不動産情報

物件情報以外の不動産に関するデータを提供や分析をするサービスです。

 

VR・AR

VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の技術を活用したサービスを提供しているグループです。

またVR・ARにするためのデータ加工関連サービスも含まれます。

 

IoT

IoT(Internet of Things)とはモノとインターネットをつなぐことをいいます。

不動産に設置、内蔵されネットワークに接続されるものに関連するサービスをいい、そのモノから得られたデータなどを分析するサービスも含みます。

 

リフォーム・リノベーション

リフォームやリノベーションを企画し設計・施工に関連するサービス。

Web上でのマッチングサービスや管理進捗や施主とのコミュニケーションツールなどを提供するサービス群です。

不動産テックが与える影響

1.不動産テックに触れる前に拒否感

長く不動産業界に身を置いている人の中には、不動産テックに対して自分の事業や業務を浸食される不安を感じる人もいますし、不動産テックサービスに対して初めから拒否感を持っている人がいます。

人と人との関係が全てだと論じるのですが、不動産テックサービスを利用したとしても人と人との関係は依然として重要なことに変わりはありません。

 

不動産テックサービスは新型コロナウイルスの影響下において、VRやARを活用した内覧などで消費者ニーズに対応して成果をあげています。

状況に応じてアナログとデジタルとを選択利用できる環境や体験の提供は関係者の生活の質と業務の効率性を向上させました。

 

不動産テックのメリットや可能性を理解することで自分の事業や業務を活性化させる道具として活用することが現実的な選択になります。

 

2.情報格差

現状では、売買価格や事故物件に関する情報などは事業者が囲い込んでいるため事業者と消費者との情報量の差が大きくなっています。

しかし、今後不動産テックによるマッチングサイトや価格査定サービス、事故物件専門事業者などが登場することで事業者と消費者の情報格差は小さくなっていきます。

反面、人と人とのつながりによる情報収集に固執し、情報の独占をし、従来の勘や経験、ハッタリなどを頼りにしていると情報弱者になってしまいます。

科学的で幅広い情報を活用し精度が高い情報を供給してくれる不動産テックを活用するか否かによって、これからは、事業者間での情報格差が広がる可能性が高くなってきます。

 

不動産テックサービスを活用する人は効率的に見込み客を発掘、追客をすることができ、お客様に与える情報や提案も精度が高いものになるため成約率を高めることができます。

 

3.不動産テックがもたらす新しい市場

物件情報や口コミサイトなどを集約する情報サイトやAIやビッグデータなどを活用して行なう価格査定サービスによって、これまで不動産会社に相談しなければできなかった資産価値の把握や売却価格の査定、買主候補の募集などが消費者同士で結ばれて完結することも可能になります。

 

またマッチングサイトによってリフォーム業者と消費者が直接結ばれたり、空き家の掃除が必要な人とスキマ時間を活用したい人同士が直接結ばれたりする機会がうまれます。

 

IoT家電やスマートホン、電気・水道などのライフラインのメーター情報を活用して、高齢者や子どもの見守りサービスを提供する不動産テックサービスが登場して注目されています。

 

インターネットを利用して、個人と個人、個人と企業、企業と企業との間で、モノや場所、技能などを売買したり貸借したりするシェアリングエコノミー市場が成長しています。

シェアハウス、ソーシャルアパートメントなどの住宅関連、サテライトオフィス、シェアオフィス、ボックス型スペースサービスなどのオフィス関連、その他ホテルやオフィスビルのロビースペースなどをコワーキング区画としたり休憩スペースにしたりとあらゆるものをシェアするサービスがうまれています。

 

コロナ禍の影響によって多店舗型商業施設が敬遠されるなかで移動型商業店舗が注目されています。

固定型店舗ではピークタイムは固定されてしまいますが、移動型商業店舗では人の移動情報、年齢、季節や曜日、時間帯や天候、交通機関の運行状況や渋滞状況などを収集し分析することで需要を予測することが可能になりますからピークタイムに合わせて移動できます。

このような情報解析が不動産テックサービスによって実現可能になります。

 

以上のように、不動産テックサービスの登場によって、不動産の市場や流動性に大きな変化が見込まれます。

これに対応するには自らも不動産テックサービスをまず理解し活用することが重要です。



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